中銀カプセルタワービルA606プロジェクトについて
建築家・黒川紀章氏により設計され、1972年に東京・銀座で竣工した「中銀カプセルタワービル」。竣工から50年経った2022年に解体されました。
中銀カプセルタワービルが解体された、今、私たち「中銀カプセルタワービルA606プロジェクト」(代表:いしまるあきこ、副代表:石丸友蔵)は、カプセル単体で展示物として保存するのではなく、自ら「使いながら遺す」ことで、銀座では実現できなかった「メタボリズム建築」の実現を目指しています。
私たちは2013年からこの建築に携わり、自身が使用してきた「カプセルA606」を含む7個のカプセルを救出・所有し、現在でも活動を続けています。黒川紀章が提案した「ホモ・モーベンスのための住まい」としてのカプセルの「車輌化」、「メタボリズム建築」を50年後の2072年の未来へ受け渡すための「ミニカプセルタワー」建設を目指しています。

私たち「中銀カプセルタワービルA606プロジェクト」が目指していること
活動開始以来、次の3つを基本方針としてきました。
1.使いながら遺す
建築は、人が使ってこそ生きていけます。展示物は、建築ではありません。住宅ならそこに住み、オフィスならそこで働き、設備は実際に使える状態で維持する。それが、私たちの考える「使いながら遺す」建築の保存方法です。
見学会の時だけ使うのではなく、日常的に使う人がいることで、建築は理想的に遺すことができるでしょう。しかし、その役割を熱量を持って担う人は多くありません。だからこそ、私たちは自分たちの人生を差し出し、自分たち自身が使い続けることを前提に保存活動を行っています。
カプセルの車両化、ミニタワーを建設してメタボリズム建築を実現することも、自身で使うことで遺し続けることを可能にします。今後、数十年間で同じような熱量で取り組める方を探し出し、これらを引き継いでもらえることができたらと考えています。
2.オリジナルを尊重する
中銀カプセルタワービルは世界的にも評価されている建築です。私たちは可能な限りオリジナルを残し、失われた部分についても調査を行いながら、竣工時の姿を尊重したレストアを進めています。新しく作り替えるのではなく、建築が持つ歴史や痕跡も含めて未来へ受け渡したいと考えています。
3.法律を遵守する
建築を長く使い続けるためには、現在の法律に適合し、安全に使用できる状態にしていく必要があります。「保存カプセル」については、竣工当時は合法でしたがカプセル内に残ってしまったアスベストの除去をはじめとした法令遵守をしながら、未来でも使い続けられる建築にすることを目指しています。
以下に、私たちの取り組みを建物解体以降から現在、建物解体前後、建物解体前に分けて、現在からさかのぼって記します。
解体以降〜現在(2022年10月〜)
2022年10月、中銀カプセルタワービルの解体工事は終わりました。建物はなくなりましたが、私たちの活動は続いています。
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現在は、保存した7個のカプセルを救出・保管しながら、
- カプセルの修復
- アスベスト除去方法の研究
- オリジナル部材・設備機器の保存
- 解体時に得られた構造・施工方法の記録整理
- 全戸図録、パーツリストなどのオリジナルの冊子制作
を進めてきています。


このプロジェクトでは、7個の「保存カプセル」の運搬費を中心にご支援をお願いするとともに、中銀カプセルタワービル全戸図録・解体編『カプセル1969-2025』や『カプセル・パーツリスト』など、将来の修復や研究に必要となる資料制作を行なっています。















600ページの中銀カプセルタワービル全戸図録・解体編『カプセル1969-2025』は2026年4月に完成し、500ページを予定している『カプセル・パーツリスト』については2026年7月現在も制作を続けています。
解体前後(2020〜2022年)
2020年末、中銀カプセルタワービルの解体が正式に決まりました。建物がなくなるまでの限られた時間の中で、自分たちに何ができるのか。
その答えとして取り組んだのが、「3つの保存」です。
- 記録保存
- オリジナル保存
- シェア保存
「記録保存」では、全140カプセルと共用部の実測調査・写真撮影を行い、建物全体の記録を残しました。「オリジナル保存」では、アスベストの影響を受けない範囲で家具や設備機器を取り外し、その後は解体工事と並行してアスベスト環境下でオリジナルパーツの救出を進めました。「シェア保存」では、解体前年まで見学会やシェアオフィスを継続し、多くの方にカプセルを体験していただきました。
これらの活動を実現するため、2021年5月に最初のクラウドファンディング「解体迫る!中銀カプセルタワービル全戸調査記録+動くカプセルで保存へ」を実施しました。308名の支援者様から総支援額406.3万円(達成率270%)のご支援をいただき、全140戸調査、オリジナルパーツの救出、「保存カプセル」の確保などを進めることができました。
解体前(2013〜2020年)
代表・いしまるあきこは、2013年から約1年間、中銀カプセルタワービルB棟9階のカプセルに居住しました。その後はオフィスとして利用し、さらにシェアオフィスとして企画・運営を行いながら、中銀カプセルタワービルを「使いながら遺す」活動を続けてきました。
その活動を評価していただき、2017年からA棟6階のA606を借り受け、「中銀カプセルタワービルA606プロジェクト」をスタートしています。
A606では、1972年竣工当時の状態を目指してレストアを進め、ブラウン管テレビ、オープンリール、AM・FMラジオ、電子計算機、タイプライター、電話、冷蔵庫、ブラインドなども可能な限り当時の状態で使用できるよう整備しました。
オリジナルのユニットバスも良好な状態で残り、多くの方々に1972年当時のカプセル空間を体感していただきました。
これから
私たちは、7個の「保存カプセル」を「使いながら遺す」という考え方のもと、建築として維持・活用しながら、修復技術や保存技術を蓄積していきます。
将来は、カプセルの車両化、保存したカプセルを活用したミニカプセルタワーの建設や、車両化による可搬型メタボリズム建築などにも挑戦し、黒川紀章氏が提案したメタボリズム建築を現代に再び実現したいと考えています。
私たちは、自分たち自身が使い続けることで、中銀カプセルタワービルを未来へ受け渡していきます。