中銀カプセルタワービルA606プロジェクトでは、中銀カプセルタワービルの解体前後に2回のクラウドファンディングを実施しました。
1回目は、建物解体前に、記録やオリジナルパーツをできる限り残すこと。2回目は、解体内容を記録し、救出した保存カプセルを調べ、どのように残し使えるようにするかを目的に行いました。目的は異なりますが、どちらも「メタボリズム建築を使いながら遺す」という一つの目標につながる活動です。
多くの皆さまからいただいたご支援により、現在の保存活動を続けることができています。
第1回クラウドファンディング「解体迫る!中銀カプセルタワービル全戸調査記録+動くカプセルで保存へ」(2021年5月開始)


「3つの保存」のうち2つの保存の実施
2020年末、中銀カプセルタワービルの解体が決まりました。建物がなくなるまでの限られた時間の中で、私たち「中銀カプセルタワービルA606プロジェクト」に何ができるのか。その答えが、「記録保存」、「オリジナル保存」、「シェア保存」の3つの保存です。
当初は自身が使用していた「カプセルA606」のみを譲り受ける予定でした。黒川紀章氏の提唱していた土地から解放される「ホモ・モーベンスの住まい」として、カプセルA606を車輌化して保存していくことを考えていました。クラウドファンディングのタイトルが「解体迫る!中銀カプセルタワービル全戸調査記録+動くカプセルで保存へ」としていたのは、そのためです。ここでは、308名の支援者さまから4,063,000円(達成率270%)のご支援をいただきました。
ここでは、その時点で取り組める保存として、「記録保存」と「オリジナル保存」の2つの保存を実施しました。






ご支援によって実現したこと
- 中銀カプセルタワービルA606プロジェクト代表・副代表、有志により、全140カプセルと地下から塔屋までの共用部の実測調査・作図と写真撮影。
- 実測調査では、大月敏雄先生(東京大学 教授)、志岐祐一氏(株式会社日東設計事務所)にご指導・ご参加頂き、また、一般社団法人Docomomo Japan有志、一般社団法人日本建築学会関東支部建築歴史・意匠研究委員会有志、公益社団法人日本建築家協会有志をはじめとする社会人有志の先生方・建築家のみなさま、東京大学の学生有志のみなさまとともに実測調査を行いました。
- 中銀カプセルタワービル全戸図録『カプセル1972-2022』の制作。
※全140カプセルと共用部の実測調査・作図と写真をおさめた400ページの冊子。 - カプセルA606や他の複数カプセル、共用部のオリジナル家具・設備・建具などの救出
- アスベスト関係の資格を取得した上で、アスベスト環境下でカプセルA606やバスルウムなどのオリジナルパーツを自ら救出する保存活動
- カプセルA606をはじめとする7個の「保存カプセル」の救出
- カプセルA606の見学会、オンライン見学会の開催
- gluonらと協働で3Dスキャンの実施。3D Digital Archive Project Nakagin Capsule Tower
このクラウドファンディングによって、私たち「中銀カプセルタワービルA606プロジェクト」は中銀カプセルタワービルの演出されていない「本当の最後の姿」を記録し、残すことができました。また、アスベスト環境下から貴重なオリジナルパーツ救出も行っています。
クラウドファンディングの報告ページ、2022年9月「終了報告:「記録保存」と「カプセル保存」の完了と今後について」により詳しく記載しています。
第2回クラウドファンディング「中銀カプセル解体!救出した7カプセルで動く建築とメタボリズム実現へ」(2022年10月開始)

「解体を記録し、つくりを把握し、再建に活かす」
2022年10月、中銀カプセルタワービルの解体工事は終了しました。「保存カプセル」でメタボリズム建築を実現するためには、解体を記録して再建できるようにし、カプセルのつくりも把握して再生産できるようにしないといけません。また、これからの長い時間、建物を保つためにはつくりを正確に把握してメンテナンスもできるようにしないといけません。
そのため、私たち「中銀カプセルタワービルA606プロジェクト」は、中銀カプセルタワービル全戸図録2・解体編『カプセル1969-2025』をまとめ、現在も『カプセル・パーツリスト』の制作をしています。
2022年10月、2回目のクラウドファンディングを実施し、カプセルA606の他に追加で救出した6個の「保存カプセル」の運搬費を中心に、解体後の保存活動を継続するためのご支援をお願いしました。






ご支援によって実現・進行していること
- カプセルA606を除く追加救出となった6個の「保存カプセル」の運搬
- 中銀カプセルタワービル全戸図録2・解体編『カプセル1969-2025』制作
※2022年の解体前後だけではなく解体中の記録、実測調査・作図、写真撮影、解体後のカプセルの実測調査・作図、竣工前後の記録調査やカプセルの比較、インタビュー、解体に至った経緯なども含む全600ページの冊子。 - 『カプセル・パーツリスト』制作(現在も継続中)
※全6種類のカプセルをネジ1本の小さなパーツから各部材の寸法やメーカー名・品番等を記録・調査し、まとめたもの。将来、カプセルを所有した者が必要となるリスト。全500ページ予定。 - 7個の「保存カプセル」の保管・維持管理
- 修復方法の研究
- 残存するアスベスト除去方法の研究
保存活動は現在も続いています。資料制作や「保存カプセル」の修復・法適合化を進めながら、将来の活用に向けた準備を行っています。
これから

私たちが目指しているのは、「使いながら遺す」という考え方のもと、「保存カプセル」を建築として維持し続けることです。
将来は、「保存カプセル」を活用したミニカプセルタワーの建設や、車輌化による可搬型メタボリズム建築などを通して、黒川紀章氏が提案したメタボリズム建築を現代に再び実現したいと考えています。
みなさまからいただいたご支援は、単にカプセルを保存するためではなく、「建築を使いながら未来へ受け渡す」という新しい保存活動へとつながっています。