私がカプセルに住んでいたときに最も困ったのが洗濯でした。カプセルにはもともと洗濯機置き場はありません。共用部にもコインランドリーは用意されていません。
竣工当初のユーザーイメージは、都心勤めのビジネスマンや東京以外に住む方にとってのセカンドハウスや東京での拠点といったものでした。分譲マンションですが、感覚的にはビジネスホテルに近く、カプセルに長期間住むことは想定されていないのです。それでも「身軽なうちに名建築に住んでみたい」と思い住んだのでした。
カプセルへ引っ越す前に「隣のビルにコインランドリーがある」と聞いたものの、見つかりませんでした。一番近いコインランドリーは新橋駅の向こう側で、歩くと20分程度でしょうか。小さなコインランドリーで夜待つのは少々怖く、近くの公園にいるわけにもいかず、行って帰ってくるにも微妙に遠く、洗濯をしかけ(40分弱)、乾燥機にかけ(40分〜60分)、それが終わるまでの間の2回を近くのチェーン系の喫茶店で過ごさなければいけないのは、なんとも効率の悪いものでした。
さて、ほかの住んでいる方はどうしているかというと、書籍『中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟』(青月社)の中でインタビューさせてもらった福田憲三さんは、自転車で銭湯に行き、そこにあるコインランドリーを使うそうです。同じくインタビューをした山川大地さんは、なんと、ユニットバスの中に洗濯機を入れ、乾燥機も置いて干すのです。カプセルのユニットバスの扉が細いので、洗濯機は一般的なものよりもひと回り小さいものですが、洗濯機を通すのは大変だったそうです。カプセルがカプセルのままで快適に生活する上での工夫ですね。
カプセルで快適に過ごすには、セカンドハウスとして洗濯を気にする必要が無い程度に滞在するのが、一番コンセプト的にもカプセルのつくり的にもしっくりくるなと最近とくに思うようになりました。
2017.07.09
文:いしまるあきこ
写真:蔵プロダクション
“カプセルの洗濯事情” への1件のフィードバック